イル・テンポ・ギガンテ

IL TEMPO GIGANTE

登場作品:ピンチクリフ・グランプリ(1975

The Pinch cliff GRAND PRIX Flåklypa Grand Prix (原題)

 

 

 

 

Pacomatic A/S製 ミニチュアカー

 

1975年に公開されたノルウェーの人形アニメーション映画「ピンチクリフグランプリ」で

主人公が製造する車がこの‘イル・テンポ・ギガンテ号’。 本国ノルウェーでは今日でも

なお人気作だそうですが、当時の状況故か商品展開的には少々寂しい状態だった様です。

 

そんな中で発売されたのが本モデルで詳細はイマイチ不明なんですが、どうも日本で

本作が公開された1978年に発売されたものの様です。 恐らく当時物では唯一の立体物

と思われますが、ケース越しでも当時の海外トイとは思えぬ高い完成度を予感させます。

 

 

モデルは発泡スチロール製の台に載せネーム入りの透明プラケースを被せてあるんですが

これを更に覆う化粧箱は未だ見た事がありません。 台座にビス等は使用しておらず主に

台座とタイヤ横の摩擦でケースを固定するという力技仕様、レーダーは事前に外します。

 

残念ながら中古車での購入だった為にケースに小さなヒビが入っていましたが

40年越しで漸く入手出来た貴重なモデルだけにここは目を瞑る方向で。

因みに本モデルを組立モデルにしたバージョンも発売されていた様です。

 

1978年発売?/定価:?

 

 

 

 

SIDE VIEW

全長:約28.5cm

 

クラシックカー・ベースな感じながらリアのスタイルは殆どカートゥーンなギガンテ号は

子供向けな派手さに大人向けなシックさを融合させた長く心に残る名デザイン。

 

劇中では主人公レオドル・フェルゲンらがアラジン石油の総裁・フィファザン王の資金

援助の下、1年掛かりで造り上げた重量2.8t・4輪駆動のレーシングカーという設定。

 

 

本車は基本的に左右対称なんですが、外付けの装備品の違いで非対称となっています。

 

 

 

 

外付け装備品あれこれ

 

左側面に並ぶ3本のシリンダーは緊急時の輸血用血液。 左からRH+、RH−、

1番右の青いのは貴族用(=ジョークネタ)で、その上にあるのはクラクション。

モデルでは割愛されていますが劇中だとクラクション基部にサイドミラーが付きます。

 

左のリアタイヤには特大のブレーキパッドを装備。 モデルでは青色で成型された

クラクション横のレバーで操作します。 本来はサイドブレーキだと思うんですが

劇中では爆走中に何度か使用するという無茶(あらわざ)をシレッと披露していました。

 

右側面には風速計とその後方にバッテリー×2を設置、劇中だとコードで繋がれていた

ので風速計で発電しているのかも。 バッテリーの後方にあるのはツールボックスで

劇中、ピットイン時に助手のソラン(アヒル)が工具を取り出していました。

 

その他、運転席後方上部にある円筒形の燃料タンクも左右の端で造型が異なるんですが…

 

 

 

 

TOP & BOTTOM VIEW

 

メッキ処理が嬉しい本モデルの車体は基本的にオールプラ製で、情報量の多いデザイン

ですがその造型は省略も少なめで実に丁寧。 運転席後方にある燃料タンクの給油口の

位置が劇中と左右逆なんですが、これは恐らく組付け時に間違えた為と思われます(涙)

 

DVDの字幕によると燃料は純粋アルコール。 ピット時に給油を担当していた酒好きの

村人オルヴァルは給油キャップをお猪口に燃料を呑む猛者っぷりを披露していました。

 

 

情報過多な上部に対しモデルの底部はアッサリ造型ですが劇中でも映らないんで無問題。

その代わりにギガンテ号と本モデルに関する情報表記があったので以下にご紹介。

 

Il Tempo Gigante

Original designKjell Aukrust

ヒェル( Kjell )氏はキャラデザも担当、当時からして結構年配の人でした。

 

Creative designerBjarne Sandemose

ビヤルネ( Bjarne )氏は劇中モデルを制作した人で、大サイズモデルは1.7mほど。

 

Copy rightsCaprino Filmcenter A/S

版権元は本作の監督イヴォ・カプリノ氏の会社。( A/S=株式会社 )

 

ProducerPacomatic A/S SalesNormack A/S

製造:Pacomatic社、販売:Normack社。 他の商品が気になります。

 

3452 Krokkleiva-Norway

クロックレイバ( Krokkleiva )はノルウェーの都市。 会社の所在地かな?

 

 

 

 

FRONT VIEW

 

19201930年代の車を思わせるクラシカルなスタイルのフロント。 前方に突き出た

挿しっ放しのクランクハンドルは筒に通した造型なんで回す事も可能ですが、抜けこそ

しないものの位置が固定されていないので前後にスポスポ動いちゃうのが難点です。

 

フォグランプ?は劇中だと空力機能なのか高速時にバイザー部が閉じていましたがモデル

には反映されず…ゴム製のタイヤは回転しますが摩擦が強く左右のステアは不可な仕様で

サスペンションには本物のバネを使用していますが残念ながらダミーと諸々残念な点も。

 

 

ボンネット内部にはV型(字幕・吹替・恐らく原語でも)12気筒エンジンを搭載、でも

劇中のシーンを見ると16気筒に見えるんですけど…? 劇中同様にカバーを開くと内部

のエンジンが見える、なんてギミックがあると嬉しかったんですが当時じゃ已む無しか。

 

劇中とのディティール面の差異については前輪のトレッドパターンが異なっていたり、

後輪だけにあるリムの装飾が前輪にもあったり等々…ですが余り問題ではないですね。

中古車故にメッキ部の曇りが気になるものの劇中シーンを見るともっと汚かったりです。

 

 

4基のライトにはクリアパーツが使用されエッジ部の装飾も再現したラジエターグリルの

カバーに施されたメッキはボディとは異なるカッパー調に。 先述の貴族用血液を青色で

成型する等々、本モデルに為された細かな演出から設計者の思いが伝わってくる様です。

 

劇中だとヘッドライトの後部からフェンダー沿いに通電用コードが剥き出しになっている

というワイルドな本車。 現行モデルならライト点灯など色々手を加えたいところです。

 

 

 

 

REAR VIEW

 

後部にはロケットエンジンを搭載だそうですが既存のロケットエンジンとは意味合いが

違いそう…子供に対しては理屈じゃないッスね。 劇中モデルを結構忠実に再現している

多数のチューブ類が大迫力っぷりを好演出。 尚、ストップランプの類は無い様です。

 

上部でその存在を主張するレーダーは霧と地滑り等を感知、その他予期せぬ障害に備える

という万能ぶり。 モデルは丸軸を挿し込むだけの構造なんで旋回させる事が可能です。

 

 

スチールで補強、鶏舎用ネット7枚重ねの巨大なリアタイヤもその迫力に寄与。

個人的にはレーダー基部のユニットから突き出た8本のプラグに惹かれますね。 モデル

では省略していますが劇中だと全てのプラグからコードが出ていて複雑さ増し増しです。

 

 

モデルの造形面で気になるのは劇中で火の粉や火炎を吹いていた迫力ある4本の

マフラーの排気口が開口されていない点なんですが、劇中で使用されたモデルの中には

何故か排気口が塞がったものもあったりするんで、この辺は何ともモニョるところです。

 

因みにデザイン画だと下方のマフラーは3本横並びだったりします。

 

 

 

 

運転席周り

 

外付けのオブジェがアレコレと並ぶコンパネはハンドル以外プリントで再現という仕様で

少々残念なんですが、プリントされた内容は劇中に対して割と忠実だったりします。

ただ中央に見える穴の部分には劇中だと何かのレバーが付いていて…もしかして欠品か!?

 

また、劇中では助手席側の足下にレースシーンで肝となる燃料気化装置(多分アレがそう

だと思います)があるんですがモデルでは割愛に…ソランと共にレオドルの助手を務める

ハリネズミのルビドグの活躍に関するアイテムなだけにここは無念さが残るところです。

 

フロントウィンドウは劇中同様に倒す事が可能なんですが何しろ古いモデルなんで

ボディ側の基部パーツを割らない様、扱いには慎重さが求められそう。

 

ソファの様なシートの造型は中々リアル。 劇中で主人公・レオドルはフィッティングが

イマイチだったのか、背中と背もたれの間にクッションを挟むという演出もあったり。

因みに劇中では非常に心許ないシートベルトも装備しています。

 

 

 

 

本モデルのスケールは…?

 

2001年に発売されたプライズ人形のルパン&次元さんに試乗して貰いました。

本モデルはそのサイズから約1/18スケールと思われる事が多いらしく海外のファンサイト

でも1/18と表記しているのを見掛けたんですが画像のルパン&次元は約1/20スケール。

 

 

ふむ、中々のフィッティング具合で良い感じ! 

劇中のギガンテ号は思いの外デカイ車で製造シーンを見ると後輪の上端がレオドルの

胸程だったりします。 尤もシーンによって人とのサイズ差が微妙に変わるんですが…

 

 

 

 

ドライバーのスケールを変えてみる

 

まずはミクロレディのユメさん。 170cm設定で約1/18なんですが、画像の様に着座時は

良くても車外に立たせると明らかに人がデカ過ぎな状態となります。 つまり本モデルの

スケールを1/18とすると劇中に見合わぬ小さな車という事になっちゃう訳なんですね。

 

 

次に他の展示室でもちょくちょく登場して貰っている約1/24のプライズ・ルパンさん。

ん〜、流石に一寸小さ過ぎるかな…車体と人とのサイズに関する違和感は劇中のレオドル

がカリカチュアライズされた人形である事からくるファンタジーさにあると考えます。

 

 

並べてパチリ。 真ん中の約1/20ルパンは靴込みとはいえ身長が約180cmとなるので

やや長身となりますが3人の中では最も相性が良いかな? 劇中のイメージ的には

2人のルパンの中間、約1/211/23スケール辺りが妥当といった感じでしょうか。

 

 

Pacomatic版ギガンテ号はプラ部品の成型色に玩具っぽさを感じつつも基本的な造型の

方向性はミニチュアカー然としており、当時にして非・子供向けな出来となっています。

 

作品は人形アニメという表現なれど当時のノルウェー人なら子供・大人問わず広く長く

楽しめる内容故に本モデルの造りも子供向けに囚われないものとしたのかもしれません。

2007年頃に発売されたモデルと比べても何ら見劣りしないのは素晴らしいの一語です。

 

 

 

 

2007年には日本国内でもDVD化

 

本国ノルウェーで1975年8月28日に初公開したとされる本作ですが何基準なのか1977

説もあり、30周年を迎えた2007年頃にはノルウェーで諸々の商品化が為された様です。

日本でもリバイバル上映され、当時の吹替え版が収録されたDVDも発売されました。

 

画像のDVDはレンタル落ちで入手したものですが日本語吹替えに加えメイキング風景が

見られる映像特典も収録。 更にセル版では2枚組のデラックス・エディションも発売、

こちらはカプリノ監督の短編映像12本やギガンテ号のペーパークラフトも付属します。

 

 

画像上は日本公開当時に発売されたパンフレットで、それによると1977年のモスクワ

国際映画祭で児童映画部門・金賞、及び最優秀アニメ映画賞を受賞したそうです。

2018年現在も尚、資料の少ない作品なのでこのパンフレットも貴重な品かも。

 

面白いのはDVDを観ても判るんですがキャラ名を日本人でも馴染みがある様なものに

変更している点(例:ルドルフ→セオドル ソラン→サニー ルビドグ→ランバート)。

 

ギガンテ号に関しても当時の慣例なのか‘ジガンテ号'となっており、当時の児童雑誌

テレビマガジン若しくはテレビランドにあった特集記事でもジガンテ表記だったので

随分長い事そちらでインプットしておりました。 三つ子の魂なんとやら、ですね。

 

 

 

 

風の様に速い!

 

先述の雑誌に「イル・テンポ・ジガンテとは風の様に速いの意」といった内容の記述が

あった記憶があります。 Il Tempo Giganteを直訳すると巨人の時間(恐らく伊語)、

巨人が走る様に(テンポが)早い的な感じ? 風の様に〜は名訳かもしれませんね。

 

2007年頃には40cmクラスのRCカーや本モデルよりも小振りなミニカーが発売され、

日本でも代理店を探していたらしいんですが残念ながら輸入販売はされず…ただネットで

それらの画像を見るとここで展示した当時物であるPacomatic版の方が出来が良い様な?

 

想えば1978年の夏、映画館のショウウィンドウに飾ってあったリアルなギガンテ号の

ミニカーに一目惚れして以来、市販品である事を祈りつつ探し続ける事40年…遂に手に

した本モデルがあの時のミニカーであったと確信! いやぁ長生きはするもんですね。

 

 

 

 

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