登場作品:海底軍艦
全長:150m/重量:10万t
速度:マッハ2(空中)・80ノット(水上)・50ノット(水中)
20km/h(地中)・300km/h(地上)
1963年に公開された東宝の特撮映画「海底軍艦」は押川春浪氏が1900年(明治33年)
に出版したSF小説を大胆にアレンジ、怪獣を主役としない娯楽作品になりました。
敵であるムウ帝国と戦う万能戦艦「轟天号」の活躍はSFメカアクションの白眉であり
そのデザインと共に現在もなおファンの多い作品です。
日本再建の為、立てよ轟天建武隊!
日本が敗戦を迎えた年、帝国海軍大佐神宮司は同技術少将楠見の助けを借り同胞と
共に伊―403潜で日本を脱出。死亡扱いとされ、そのまま忘れ去られた存在
だったが資源豊かな南方の島で生き続け「海底軍艦 轟天」を建造していた…
というストーリーで潜水艦の設計にも優れた能力を持つ神宮司大佐は20年の歳月を
かけ轟天を建造するのですが、それはとりもなおさず敗戦国日本を再建し再び世界の
列強ならん事を願ったものであり、世界を救う為にムウ帝国と戦う様に…と説得しに
来た楠見の話も「目的が違う」と当初は聞き入れません。
こんな神宮司大佐のお堅い武人ぶりが好きだったのですが、度重なる説得に加え
愛娘がムウ帝国にさらわれたとあっては最早戦わざるを得ません。
かくして海底軍艦・轟天は出撃します。
万能戦艦・轟天号
原作小説では「普通に」潜水艦だったらしいのですが(挿絵も無い)映画化に
あたり小松崎茂氏によってデザインされ見事に映画の内容に則した姿となりました。
轟天は水中水上は勿論の事、空中・地中さらに設定では地上走行も可能と正に
万能戦艦なのですが、限られた尺の中ではその魅力を100%発揮する事は
難しかった様です。(なにしろピンチらしいピンチが無かった)
個人的には主砲でバンバン打ち合う様な展開を期待したいのですが何しろ
艦首の冷凍砲が強すぎて…海竜マンダとの対決も案外あっさりカタがついちゃったり
して少し残念な気がします。とはいえ、この時代にここまで轟天を描いて見せたのは
見事としか言い様がありません。受け手側も今ほど情報の無い時代、比較する
SF映像もまだ少ないこの頃に少年時代を送っていた人が当時「海底軍艦」を観た時
に味わった感動というのは、情報が氾濫する現代を生きる若い世代にには理解出来な
いのかもしれません。この時代の少年達はある意味、最も幸せな世代なのかも。
ドリル!ドリル!ドリル!
さて、轟天といえば「ドリル」なワケですが…(笑)映画を観ると分かるのですが、
轟天は水中でも空中でもその殆どの時間でドリルが回転しています。
ただの置物を操演するだけでは絵的につまらないので(特に映画では)
何かしらの「動き」が欲しかったと思われます。劇中では爆破されたドックから
脱出する為に防水扉をブチ破ったり海底深くにあるムウ帝国の更にその地下
10キロにある動力室まで潜っていったりと、ドリルは大活躍します。
ドリル先端には冷凍砲を装備しており、主砲を差し置いてこれを多用します。
こんな感じでスクリーン上に於いて度々ドリルがクローズアップされるので
余計に印象付けられているのかもしれません。
アオシマ製 新世紀合金
アオシマの新世紀合金シリーズがメーサー車に続き、満を持して登場させた
のが本商品。1/350の大スケール、変形機構搭載、モーター動力による
ドリル回転にライト点灯、そして合金故の重量感など申し分無い内容となっています。
箱画は小松崎画伯によるもので過去に発売された商品用のものを転用した様です。
◆本商品はノーマル塗装版と汚し塗装版の2種が発売されており、
以下で紹介するのはノーマル版になります。
2008年発売/定価:18000円
左舷および上・底部
全長:約43cm
大スケールからくるその堂々たる存在感は画像では伝わり切らぬほど。
底部のビス穴が目立ちますが、それを差し引いても失禁もののカッコ良さ!
手にズッシリくる重量感もたまりません。
←専用台座が付属。
前部および後部
案外デップリした艦影もしっかりと再現されています。
シンプルなデザインなのですが大きなスケールでも間延びしないというのがスゴイ。
各部収納せよ!
艦首にある回転式衝角&安定翼、及び艦尾の安定翼が手動で艦内に収納可能。
艦尾の安定翼は4枚が連動して収納・展開します。
艦橋周辺
潜水艦らしい艦橋部。前後に計4基ある主砲は回転可能、砲身も上下に可動します。
潜舵も画像右の様に折りたたみ可能で変形に備えます。
艦橋部、収納!
艦橋部を艦内に収納可能。突端にある潜望鏡類も収納されます。
画像右上に見えるレバーをスライドさせれば艦橋がポップアップ。
反対側のスライドレバーを操作すれば後部からカバーの先端が出てきます。
後は手動で前方にカバーをスライドさせれば完全に艦橋部が隠れます。
以上の工程にて変形完了!
電源確認!
底部後方には電池ボックスが。単4電池×2を使用します。
電池ボックス前方には2種類のギミック用スイッチを設置。
画像で上(左舷側)にあるのがドリル回転用スイッチで、
前方に入れると正回転、後方に入れると逆回転します。(中央がオフ)
下(右舷側)がライトの点灯用スイッチになります。
ドリル回転!
上記のスイッチ操作でドリルが正・逆回転可能。
注目すべきはドリルの回転と連動して先端の冷凍砲が劇中同様、
前後に動くところで起動した瞬間に気分は大いに盛り上がります!
もうひとつのスイッチで底部に8個、後部に4個あるノズルが発光。
こちらも非常に良い感じです!
組み込まれたライトは非常に明るいものが使用されています。
挺身隊、前へ!
画像のフィギュアが2体付属。洒落たオマケですね。
いざ出撃!
プロポーション、ディティール、サイズにギミックに重量感。
新世紀合金・轟天号、値段は張りますが相応の価値はあると思います!
イワクラ製・食玩およびバンダイ製フィギュア
画像左の左側はイワクラの「ゴジラ特撮大百科3」のラッキーアイテム。
右側はバンダイの「東宝マシンクロニクル」の1品で、共に昨今の高い造形技術で
作られており尚且つ手頃な大きさなので飾っておくには丁度良い。
イワクラはポリストーンがメインの素材なので注意して取り扱わないと
「ポキッ」…と、イっちゃいそうです。
イワクラ・バンダイ共に定価¥350
画像右はイワクラ版で、洒落た台座が付属しています。
以下、イワクラ版とバンダイ版を比較形式で紹介。
左舷および前後部
全長約11.5cm(イワクラ) 約11cm(バンダイ)
殆ど同じ大きさだがイワクラ版の方がプロポーションとディティールが良好。
艦首のドリルは最大の特徴だが轟天やモゲラ辺りがハシリなのかな?
その後ドリルに固執する妙なマニアも発生する事に…自分もその1人ですw
バンダイ版は喫水上が薄いメタリックブルーとなっていてチョット変わった印象を受けるが
実物もスチールによっては驚くほど青っぽかったりするので、これはこれで可か。
後部に見えるノズルは配置に違いが見える。
映像を見る限りではイワクラ版が正解。
上部および底部
艦橋部前後にある主砲は活躍せず専らドリル先端の冷凍砲が使用される。
艦首に3ヶ所ある回転式の衝角はイワクラ版の方が薄くて気持ちいい。
キールや噴射口の再現に差が出ています。バンダイ版は直線的な造形。
フジミ製 プラモデル
2001年に発売された1/700の完全スケールモデル。 定価¥2300
喫水上のみの「シーウェイモデル」、完全体の「フルハルモデル」、
艦橋を収納した状態の「飛行形態モデル」の3パターンで組み立てられる。
ドリル回転(手動)、ドリル後方3ヵ所の回転式衝角及び艦首2・艦尾4の安定翼は
引き込み可能。主砲塔は旋回・砲身も可動。砲身はクリア製の予備部品を使用する
事により劇中のイメージに近づける事が可能。また、艦橋部にある潜舵は
折り畳み状態とのコンパチ等々、大変充実した内容となっている。
その後ドリルをアルミ製にした物やドックを再現した部品を追加したディオラマセット、
キャスト製のマンダとセットになった物を発売する等、かなり力の入った展開でした。
オオタキ製 プラモデル
1/800のアバウトスケールモデル 何しろ上のフジミ製より大きい(笑)
初期デザインを立体化したらしく、若干形状が違います。初版はゴム動力でした。
定価:500円
画像は83年頃の再販品ですが当時どこの売場でも売れ残っていた気がします。
90年代にはM1号から2隻入りで復刻された事があり、
小松崎画伯自ら箱絵を描いておられました。
ところでこのモデル…
かつてあったコアな雑誌、「DO−PE」91年秋号VOL.7(あまとりあ社)
によると内部にウレタンを入れて底部に水中モーターを装備した作例が
載っており、楽しそうに浴場で遊んでいるのですが…その記事によると、
特に改造しなくても「勝手に」自動浮沈航行してしまうそうです。
そういうデザインなんでしょうか?スゴイですね(笑)
そう云えばこのキットのメーカー、オオタキも既にありません…。
「海底軍艦」は日本のSF史に確かな1歩
を記した作品であり轟天号もその後の作品に
影響を与えた名潜艦でした。
純粋な潜水艦ではありませんが科学万能の
思想が潜水艦というものを大きく飛躍させ、
巨大なスクリーン上で見事に開花させて
くれました。今から40年以上も昔の話です。
画像はバンダイ製の食玩